認知症について
認知症は、正常に働いていた脳の機能が低下し、記憶や思考への影響が見られる疾患です。加齢に伴って発症リスクが高まるため、70歳代や80歳代以降の患者様が多いですが、比較的に若い方がなりやすいタイプもあります。認知症になると、物事を記憶したり判断したりする能力や、時間や場所・人などを認識する能力が低下するため、実生活に支障が生じてきます。今までは問題なく行えていた事が急にできなくなった、通い慣れていたはずの道がわからなくなった、同じことを何度も聞いたりするようになった。こうした症状が増えてきたときはお早めに受診下さい。
主な認知症の種類
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、神経が情報をうまく伝えられなくなり、機能異常を起こす病気の1つです。アミロイドβなどの特殊なたんぱく質が脳に蓄積され、神経細胞が壊れて減ってしまうことで発症します。また、神経細胞が死んでしまうことによって脳が萎縮していき、脳の指令を受けている身体機能も徐々に失われていきます。認知症には幾つかのタイプがありますが、その中でも一番多いタイプとされています。また、男性よりも女性に多く見受けられます。
脳血管型認知症
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血など、脳血管障害がきっかけとなって引き起こされるタイプの認知症です。脳の血管が詰まったりすると、脳細胞に酸素が行き届かなくなり、神経細胞が死んでしまいます。これに伴い、脳血管型認知症を発症するのです。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、レビー小体が脳の大脳皮質や脳幹にたくさん集まることで起こります。レビー小体が蓄積している部位では情報をうまく伝えられなくなるため、記憶障害などの認知症状が見られます。さらに、動作が遅くなったり、転びやすくなったり、特徴的な幻視が繰り返されたりします。アルツハイマー型認知症とは異なり、男性に多く見られます。
前頭側頭型認知症
前頭葉と側頭葉が萎縮することによって起こるタイプの認知症です。認知症は後期高齢者が多いですが、前頭側頭型認知症の場合、65歳未満で発症することが多いと言われています。比較的に早い段階で自制力の低下、異常行動、常同行動などが出現します。さらに進行すると、言語理解に支障を来たすようになります。
認知症の治療
薬物療法
アルツハイマー型認知症の場合、認知症治療薬が比較的有効な場合があります。認知機能を増強し、記憶障害や見当識障害などを少しでも改善し、病気の進行を遅らせます。さらに、行動や不安、焦り、怒り、興奮、妄想などの症状を抑える効果も期待できます。抗認知症薬が効きづらい脳血管型認知症では、脳血管障害の再発によって悪化していくことが多いため、脳梗塞などの再発を予防する薬剤を使用します。また、意欲・自発性の低下、興奮といった症状に対して脳循環・代謝改善薬が有効な場合もあります。抑うつ症状に対しては、抗うつ薬が使われたりもします。当院では、薬の効果と副作用を定期的にチェックしながら、個々の患者様の症状に合わせて使用します。米国において2023年1月6日に米国食品医薬品局(FDA)よりアルツハイマー病治療薬として迅速承認を取得したレカネマブについては、認知症を心配する方にとって気になる薬剤です。日本での動向をふまえ、速やかな情報提供を行います。単に認知症が心配というだけでもお気軽にご相談下さい。
非薬物療法
薬物を使わずに脳を活性化し、残っている認知機能や生活能力を高める治療法です。認知症と診断されたとしても、ご本人にできることはたくさん残っています。まずは家庭内で本人の役割や活躍の場をつくり、前向きに日常生活を送ってもらうことが大切です。また、昔の出来事を思い出してもらったり、無理のかからない範囲で認知リハビリテーションを取り入れたり、音楽療法や園芸療法を検討したりします。この他にも、ウォーキングなどの有酸素運動、動物と触れ合うペット療法なども知られています。